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東京家庭裁判所八王子支部 平成7年(少)516号 決定

少年 J・R子(昭51.11.21生)

主文

少年を医療少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、

第1  平成6年7月25日午後9時30分ころ、東京都新宿区○○×丁目×番×号○○○○○○○株式会社○○駅から東京都武蔵野市○×丁目×番×号同社○○△駅に向けて進行中の○△駅発△△駅行の○○線下り電車内において、トルエンを含有するシンナーをみだりに吸入するとともに、その残量約280ミリリットルを同様の目的で所持した、

第2  同年12月12日午後10時30分ころ、東京都渋谷区○○×丁目×番××号警視庁○○警察署内において、トルエン約80ミリリットルをみだりに吸入する目的で所持した、

第3  平成7年8月30日午後11時10分ころ、東京都豊島区○○×丁目×番××号○○○○○○○株式会社○×駅地下1階券売機前通路において、トルエンを含有するシンナーをみだりに吸入するとともに、その残量約71ミリリットルを同様の目的で所持した。

(法令の適用)

いずれも毒物及び劇物取締法24条の3、3条の3、同法施行法32条の2

(処遇の理由)

本件は、判示のとおりの毒物及び劇物取締法違反3件の事案であるところ、本件調査及び審判に表れた一切の事情、とりわけ、

1  本件は、いずれも少年がシンナー吸入により酩酊状態となっているところを通行人等に発見されたことが捜査の端緒となっており、この点だけから見ても、少年のシンナーに対する依存性は顕著で、少年の生命・身体に対する危険性も高いと認められること、

2  のみならず、少年は、平成6年春ころからシンナー吸入を始め、対人関係で傷付くと、すぐ自暴自棄となり、酩酊状態になるまでシンナー吸入や飲酒を行い、刃物で手首を切ったり、薬を大量に飲むといった自傷行為や自殺未遂まがいの行為を繰り返していたもので、平成6年9月から同年11月までと、平成7年3月から同年4月までの2回にわたり、精神病院に入院したものの、退院する都度、同様の行為に及んでいるもので、躁うつ病の疑いがあることもあって、シンナー吸入や飲酒に対する自己抑制は、ほとんど期待できないこと、

3  少年は、高校中退後、同棲相手の家を転々としながら非行を繰り返していたが、実母は、少年を精神病院に入院させたほかは、有効な対策をとり得なかったこと等に徴すると、少年が一応の反省態度を示しており、大検受験のための予備校に通学を始めたばかりであることや、これまで格別の前歴のないこと等の少年に有利な事情を考慮しても、このような少年の心身の著しい故障に適切な医療を施すためには、医療少年院における医療措置が不可欠と思料する。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、少年を医療少年院に送致するこことし、主文のとおり決定する(なお、少年については、医療措置終了後、中等少年院へ移送することも考えられるが、この措置に相当の期間を要すると見込まれること等を考慮し、特にその旨の処遇勧告は付さないこととする。)。

(裁判官 大野和明)

〔参考〕 鑑別結果通知書〈省略〉

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